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ねずみもにげだす

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アザリヤ設定



“戦いの中で死んだ戦士の魂は、神々の住まう楽園へ導かれる”
――メルンテーゼのある地方に見られる信仰である。
戦士たちは死後生の安楽を頼みに勇敢に戦い抜き、
その命を散らすことまでも含めて美徳としてきた。
 
 
ここに一人の元兵士がいる。
弦の無い奇怪な金属弓を背負い、
右肘から先を無骨な鉛の篭手で覆っている。
よくよく観察すれば、篭手の隙間から
かすかに紅い光が漏れ出しているのが見えるだろう。
 
彼の右腕には実体が無い。
先王に仕える弓兵の任の中で彼は弓弦を引き絞るべき右腕を失い、
今は鉛の篭手を被せたアストラル体の腕で、
弦の無い弓――魔弓を操る。
 
死後生信仰を知る者も知らぬ者も、
彼を単に「レッドアーム」と呼ぶ。
知らぬ者は“鉛の腕”の意を込め、
知る者は“楽園へと導かれた腕”の意を込めて。
 
 

 
 
[アストラル体]
命あるもの全てに宿る、エネルギーを持った質料。
 
アストラル体は同じアストラル体以外のものと干渉することは無く、
物質と接触しても何の影響も及ぼさず浸潤貫徹し、すり抜けるだけである。
ただし、アストラル体と生物が接触するときは、その生物自身が有するアストラル体との干渉を
通して近似的に“触れる”ことが出来る。
しかしアストラル体の側に接触の意思が無い場合、アストラル体は無生物に対するのと同様に
生物を“すり抜ける”ことが確認されている。
 
また、鉛をはじめとする数種の金属は、物質でありながらアストラル体と干渉する性質――
反アストラル性を例外的に持つことが知られている。
この反アストラル性の強度を突破するに足る意思力の強さがアストラル体の側に無い限りは
反アストラル性物質はアストラル体の浸潤を弾くことが出来る。
鉛は最も手に入りやすい反アストラル性物質であるが、その反アストラル性は弱く
標準的な練度の術士が攻撃の意思を以て放ったアストラル体を鉛で弾き返すためには
文字通り「城壁を背負うよう」な厚みの鉛を用意する必要があるとされている。
 
 
[lead arm]
右上腕部に嵌められた翠玉の腕輪の力により、アザリヤの右肘から先はアストラル体で
形成されている。
この腕は生身だった頃と同じように自在に動かせるが、反アストラル性を持たない物質には
触れられないという難点がある。
これに対してアザリヤは、浸潤貫徹しようという意思を自ら持たない限りにおいてはアストラル体との
接触が可能な鉛で出来た篭手を装着し、その篭手の上から物質に触れている。
 
 
[led arm]
一足先に楽園へと“導かれた”腕。
戦いの中で四肢を欠損した場合、その部位は
「主人よりも先に楽園へ導かれ、後から来る主人の魂を呼び寄せる役割を果たす」と見なす習慣が
戦士たちの間にはある。
戦士の死後生信仰は本来的には死者を弔う祈りのかたちであったが、戦士としては
一線を退かざるを得なくなった負傷者を慰撫する目的で信仰に修正が加えられていったと見られる。
 
 
[魔弓]
形状は通常の弓と変わらないが、多くは金属製で撓らず、物質としての弦を持たないため、
弓としては使用できない。
使用時には装者のアストラル体から弦と矢を構築し、弓弦を引き絞り、放す動作を介して、
アストラル体に装者の“意思”を載せて投射する。
アストラル体の持つエネルギーに“意思”で指向性を与えるという原理だけを見れば、発振器である
魔弓とアストラル体の供給源である装者が揃いさえすれば一連の身体動作は必要無い。
しかしアストラル体による攻撃には装者の意志の強さや認識が多大な影響を及ぼすため、
あらかじめ定めた一連の動作――それも明確に攻撃意思を表示する動作を攻撃の度に行うことで
その意思を補強し、投射の威力を高めている。
また、装者が標的を明確に認識して放ったアストラル体は標的自身が有するアストラル体を追って
どこまでも追尾していくため、的を外すということは無い。
ただし、装者が認識出来ていない標的の追尾は不可能であるため、通常は投射の瞬間まで
標的が視界内にいる必要がある。
 
 
[反アストラル性]
鉛をはじめとする数種の金属が持つ、アストラル体と反発する性質。
攻撃意思が鉛等の反アストラル性よりも弱い場合、その攻撃は反アストラル性物質を
すり抜けることが出来ず
に弾かれる。
とは言え、標準的な術士が攻撃の意思を以て投射するアストラル体を防ぎきるためには文字通り
「城壁を背負うような」厚みの鉛が必要とされており、たとえ幾ばくかの減衰を
確実に引き起こすと言っても、
鉛はアストラル体の投射攻撃を素通しするに等しい。
ただしアストラル体の側に攻撃の意思が無ければこの限りではなく、
アザリヤの右腕が生身の肉体と
同様に篭手を装着することが出来るのは、
攻撃意思が不在であるためにアストラル体が鉛を
浸潤貫徹しないからである。
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